映画『太陽の子』

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公開初日舞台挨拶レポート

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このたび、本日8月6日(金)主演の柳楽優弥、有村架純、黒崎博監督登壇の公開初日舞台挨拶が行いました。日米共同制作で10年以上もの構想を経て製作された本作がついに公開。それぞれの想いの詰まった舞台挨拶をレポートいたします。

 

■日時:8月6日(金)

■登壇:柳楽優弥、有村架純、黒崎博監督

 

 

昨年の『映画 太陽の子』公開決定のニュースから約1年。そして広島の原爆投下から丸76年となるこの日に公開を迎えた本作のキャスト・監督たちが登壇すると、公開を待ちに待った満員の観客の割れんばかりの大きな拍手が起こり、舞台挨拶はスタート。

 

本作の主人公・石村修を演じた柳楽優弥は「本日はありがとうございます!2年前に撮影を終えて、いよいよ今日初日を迎えられて皆様にお届けできて嬉しく思います!」と無事公開を迎えられた感謝の気持ちを素直に表現。

続いて紫色のシックなドレスをまとった有村は「2年前に撮影をしていて、公開まではあっという間だなという思いと、今日が広島に原爆が落とされた日ということで、そんな日にこの映画が公開できることが意味があるなと改めて思います」と本作の“原爆開発“というテーマと深い関係を持つ8月6日の公開となったことにも触れ、感慨深く挨拶。

構想10年以上、膨大なリサーチの上で情熱の全てを注いで作り上げた映画がついに公開を迎えた黒崎博監督は、「こんなにたくさんの方々に集まって頂けて、胸がいっぱいな思いです。この企画を考え始めてから12、3年を要してしまったので、こうして大きなスクリーンで見て頂けて、そしてキャストのみんなとここに立つことができて光栄です」と思いを明かした。

 

 

公開前に試写会で一足先に鑑賞した人からも”3人の演技が素晴らしい”という声が続出している本作。

過去に共演経験があったからこそ兄弟・幼馴染という関係性が自然と演じられたというその3人について柳楽は「本当にたくさん思い出があるんですけど、3人と監督たちで食事に行ったり、撮影していない時も距離感が役柄と似ている感じでした。中でも京都の川沿いを僕と春馬くんが一緒に走っているシーンで、春馬君の体力がタフで僕が追いつけなかった。その様子そのものが劇中のキャラクター性とリンクしていて好きなシーンです」と振り返る。黒崎監督も「春馬くんは体力が無限にあるのかと思うくらいタフ。3テイク目まで走った時に柳楽くんが『もう無理です』って言うくらい(笑)」と三浦のタフさに太鼓判を押す。

 

柳楽と三浦が演じる石村兄弟の密かな想い人であり、戦時下であっても一人未来を見据えて生きる世津を演じた有村は柳楽・三浦の2人について「柳楽さんと一緒に過ごして思ったのは周りを巻き込む力が強い方だなと。そこにいるだけで周りがどんどん吸い込まれていくような、空気が変わるってこんな感じなんだなと思いました。春馬さんはまたそれとは違って、色んな空気とか個性とかを全て調合して新しいものを作ってくれるという雰囲気を感じて。春馬さんはどこに行ってもみんなが気持ち良い空気が作れる役者さんだと感じました」と異なる個性を持った“兄弟”を幼馴染目線で振り返る。この絶妙なキャスティングについて黒崎は「こうやって台詞で演じて作るという以前に、それぞれの俳優さんが持っているもの・準備してくれているものでスタートがかかる前に大事なセッションが始まっているということを現場で感じて撮影していました」と幼馴染たちの絶妙な空気感の裏話を明かした。

 

ここでスクリーンに場面写真が映し出され、話題は名シーンの撮影エピソードへ。

まず始めは柳楽演じる主人公の修が黒板に数式を書き進めて、書ききれなくなって壁や棚のガラスにまで書き進めてしまうというシーン。

当該シーンは撮影当日の朝に突然追加台本を渡されたことをMCに聞かれると、柳楽は「数式を覚えなきゃいけないんですけど、みんなで頑張りながら覚えていきました。書き方でも、京大生の日々書いてる“慣れ”が出るみたいで、そういうところも教えて頂きました」と突然の難しい注文にも前向きに取り組んだことを明かすと、黒崎は「どうしても直前に思いついてしまうということがあって、柳楽くんはすごく準備をしてくれる俳優さんでもあるけど、反射神経の方でもあるので、お芝居としては面白いと思ってくれるんじゃないかなと思って…」と自らフォローする一面も。

 

次は3人が京丹後の美しい海でひと時の夏休みを過ごすシーン。

この時の撮影のエピソードを聞かれた有村は「すごく大きな蜂の巣があって。カメラには映る場所ではなかったんですけど、私が出番を待つところにちょうどあって。『蜂の巣があります』っていう話をしたら現場のスタッフさんが頑張って取ってくださって、みんな救われました」と衝撃的なエピソードを披露すると、柳楽も「砂浜から蜂が出てくるくらい蜂がいたよね」と衝撃的な思い出を振り返る。そんな裏話もありつつ、「京丹後の海の色が本当にキレイで脱いで入りたくなるような。このシーン自体もまだみんなの心にこみ上げてくるものが爆発する前だったので、純粋に楽しかったなと」戦時下での安らかなひと時を懐かしく振り返る。有村も「京都ロケの最初の方に撮った記憶があるんですけど、初めて3人の幼馴染の空気感が出るシーンで、3人が子供に返ったような気持ちで過ごす重要なシーン。でも、すでに空気感が出来ていて、アドリブもやりとりの中にあったり、印象に残っているシーンです」と幼馴染の限られた楽しい時間を大切に過ごしたことが明かされた。

 

最後はこちらも反響が大きかった田中裕子演じる母・フミが戦地に戻る三浦春馬演じる弟・裕之を見送るシーン。

このシーンについて有村は「段取りから現場で見ていて、この時の田中さん演じられたフミさんは一言も発していないんです。私も日ごろから台詞のない部分を大事にしているんですけど、改めて言葉で表現できない思いっていうのがあるんだなと確信しました。より自分自身も台詞に囚われず、言葉以外の思いをもっと熱量を高めて表現していきたいなと勉強させてもらったシーンです」と田中裕子のセリフなしの演技の素晴らしさについて語ると、柳楽も「裕子さんの演技も勿論なんですけど、やっぱり春馬くんの雰囲気っていうのも素晴らしいなと見ていました。修として、ただ応援しているだけではなく複雑な心境でした。シンプルな心理状態じゃないところが後半は多かったです」と劇中の原爆開発に携わる兄・修と、いつ命を落とすか分からない戦地に戻る弟・裕之という兄弟の関係性も踏まえて、弟への複雑な気持ちを振り返った。

 

そして話は日米共同制作におよび、本作の重要なキャストのひとりであるアインシュタインを演じたピーター・ストーメアから日本のみなさんへ手紙が届いていると、MCが代読。

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オーディエンスの皆さん、ようこそ。

今夜は参加できず申し訳ございません。

しかしながら、私の愛する妻と娘は参加させていただいております。

もちろん、私の魂も皆さんと共にここにあります。

この作品は、才能あふれる黒崎監督の情熱から生まれたものです。

日本、そして米国から様々な人々が参加し、この価値のある映画が作り上げられました。

この作品に参加できたことは、私にとっても名誉なことであります。

他の作品の撮影の最中に本作ナレーション収録がカナダのトロントで行われました。

私が参加できるよう、黒崎監督はわざわざカナダまでお越しくださいました。

 

我々人類が学ばなければいけないこと、そして、その学びから明るく希望溢れる未来を創造していかなければいけないことを伝えるこの作品に参加でき、自分自身を誇りに思いますし、とても嬉しく思います。

是非『映画 太陽の子』をお楽しみください。

お越しいただきありがとうございました。

 

愛をこめて。 

ピーター・ストーメア

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ピーターの声の出演について黒崎は「最後の最後に揃っていないピースのようだったんです。どうしても柳楽君演じる修の心の中の対話の相手としてピーターさんの声が欲しいと思って諦めかけた瞬間もあったんですけど、急遽トロントで半日だけ時間がもらえるということになり、撮影しました。ご家族が広島の方ということもあって、愛を込めて演じてくださいました」と行動力が叶えた奇跡の出演を振り返ると、実際にその対話相手を演じた柳楽は「撮影していく中で日米合作というのがすごく気になっていて、(原爆開発が)どういう視点で見られるんだろうと思っていたので対話のシーンは、現場で“英語で話すこと”を提案させて頂きました」と本作を象徴する英語での対話というシーンは実は柳楽の提案から生まれたことが明かされた。

 

最後の挨拶で黒崎は「この難しいテーマをはらんだ物語ですけど、敵と味方の話ではなくて、それを超えたところで人間みんなの問題として見てもらえる映画にしたいと思って日本人だとか何人だとかを超えて理解して感じてもらえるように演じていこうとキャストの皆さんとも話しました」と本作に込めた思いを明かす。

続けて、「こうしてここに立って、正直に申しますと『足りないんじゃないか。春馬くんが何でここにいないんだろう』と思います。このことをコメントすることはとても難しいですが、きょうはそれをお伝えしたいです。ただ見ていただいた皆さんに感じていただけたたら嬉しいのは、スクリーンの中に一緒に走り切ったその姿は完全に残っていて、今でも、こうやって僕たちが話していてもリアルタイムにお互いを感じながら話をすることができるっていうのはすごい幸せなことだと思います。柳楽くんも有村さんも春馬くんもその他のキャストもみんなで言いたかったのは、どんな難しい状況でも最後は生きて、生きて、生き抜くことしかないということ、バカみたいにストレートなメッセージだけは少しでも皆さんに届くと、残ると、こんなに嬉しいことはないなと思います」と観客に向けて力強くメッセージを送った。

 

続く有村も「この作品においては本当に沢山の伝えたいメッセージというものがあって、戦時下の話ではありますが、当時生きた若者たちが未来を作るために懸命に生き抜いていく青春のお話でもあります。今は先行きが不透明で、なかなか未来のことを考えるのも疲労してしまうような状況ではあると思うんですけど、考えることを諦めてしまうのは私としては心苦しいなと思うので、春馬さんもよく仰っていた『自分たちの仕事・役目は想像力を届けることだ』ということを改めて自分も皆さんと一緒に考えていけたら嬉しいなと思います」と一緒に舞台に立つことが叶わなかった三浦の言葉を挙げながら、締めくくった。

 

最後は、主演の柳楽から「こういう状況の中で来て頂いたことにまず感謝です。この映画があるということが大事だなと思います」と感謝の気持ちを伝えつつ、「きょう、広島で行われた式典で小学生のスピーチがとても印象に残っています。『別れるというのは出会えなくなるからではなく、忘れられるからです』ということを仰っていてすごく腑に落ちました。人に対しても、歴史に対しても、“忘れていくこと”が一番怖いなと感じました。こういう風に映画を通して、皆さんに伝えていくことが平和への第一歩なのかなと思いました」と本作に込めた熱い思いを誠実に語り、舞台挨拶を締めくくった。