映画『太陽の子』

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8月15日 トークイベントレポート

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このたび、公開を記念したスペシャルトークイベントを、8月14日(土)、そして終戦記念日の8月15日(日)の2DAYSで開催

監督の黒崎博とプロデューサーの森コウが、そして15日のイベントでは浜野プロデューサーも飛び入り参加し、本作の製作秘話、“8月の今”観るべき意味にも迫り、熱いトークを展開。本ニュースでは8月15日の模様をレポートいたします。

 

【8月14日実施の共感シアターアーカイブはこちら】

https://bals.space/theater/233/

 

 

【8月15日(日)】“太陽の小部屋”トークイベント@渋谷HUMAXシネマ

『映画 太陽の子』の公開を記念して、終戦記念日である8月15日(日)に東京・渋谷の渋谷HUMAXシネマにて“太陽の小部屋”と題してトークイベントが開催され、黒崎博監督、森コウプロデューサーそして、飛び入りで参加した浜野高宏プロデューサーが登壇。一般の観客には初めて公開されるメイキング映像などを中心に本作について語り合った。

※写真左から 森コウプロデューサー、黒崎博監督、浜野高宏プロデューサー

 

 

初公開のメイキング映像として最初に紹介されたのは、有村架純さん演じる世津が工場での労働で炉に石炭を入れるシーンの様子。

この日が有村さんにとっては撮影初日となったが、森プロデューサーは「ものすごく暑い日だったんですが、有村さんの初日ということで現場もすごく緊張感がありました。(炉の)火はガスで燃やしていて、そこに石炭を入れていくんですが、閉めきっての撮影ですごい温度で、そこにいるだけでクラクラしちゃうくらいでした。有村さんはすごくストイックで、そんなに言葉は多くないけど、ポイントですごく鋭いことを言う、頭の良い方で、女優としての深さを感じました。この暑さの中で、監督は必死の表情を引き出すために長回しをするんですけど、有村さんは何度やっても『暑い』とか『苦しい』といった言葉をひと言も言わないんですね。感服しました」と絶賛する。

 

黒崎監督は「そもそも撮影のスケジュールは助監督が組むのですが、最初に何を撮るかってすごく大事なんです。(助監督の組んだスケジュールを見て)なるほど、ここからやるのかというスタッフの意思を感じました。実際に(本編で)使うのは30秒くらいなんですけど、10~15分くらいずっとやってて、『よーい、どん』でお芝居を始めて、だんだんお芝居をしているという感覚がなくなって、『手が痛い』とか『暑い』とか『息ができない』とかを通り越して出てくる表情があるんですね。有村さんはそれをわかってくれているから、2分を超えたあたりから『これ来たな…』と思っていたと思います(苦笑)。カットがかかったときは、鼻まで煤で真っ黒でしたが、当時は小学生からみんな、当たり前にそれをやっていたんですね。せめて最初にこういうテイクがあってもいいんじゃないかと思ってやっていました」と意図を明かし、それを理解した上で見事にやり切った有村さんへの感謝と敬意を口にした。

 

 

続くメイキング映像では、柳楽優弥さんが演じる修が数式を延々と書き続けるシーンを紹介。

黒崎監督は柳楽さんが劇中で使用しているメガネについて言及。

「キャラクターを決めていく中でいろいろ試して決めました。このメガネに白衣の扮装をすると柳楽さんにスーッと役が降りてくる瞬間があるのを僕も感じていました」と語る。さらに柳楽さんについて「目がとてもよくて、鋭いけど優しいピュアな目をしていて、それを撮りたかった」とこの数式のシーンを入れた意図を明かしたが「申し訳ないことに、このシーンは撮影当日の朝、思いつきました」と告白。現場の物理監修の協力者に数式の作成をお願いし「ごめん、これ全部覚えて」と柳楽さんをはじめとする研究チームのメンバーに撮影直前に紙を渡したと明かし、客席は驚きに包まれていた。

 

 

 

そして最後に紹介されたのが、三浦春馬さん演じる裕之と修、そして世津が久々に家で顔を合わせ、兄弟で食卓を囲むシーン。

映像からは和気あいあいとした現場の雰囲気が伝わってくる。森プロデューサーは「柳楽さんと三浦さんはこの映画の中では腹違いの兄弟ですが、元々、2人は小さい頃からオーディションで会ったりして、お互いに知ってるんですね。この映画の中では、いい感じの兄弟でありながらライバル心もあったりする絶妙な関係性なんですが、それは日々、2人だけで構築していったものです。もっと二人を一緒に見たかったなって思います…」と言葉を詰まらせる。このシーンについて話を振られた黒崎監督も、言葉を詰まらせながら「このシーンは、和やかに見えて、実はすごい緊張感がありました。(裕之が)帰ってきて初めてご飯を食べているところで、どれくらいの温度感でやったらいいのかをみんなが探り合っているんですね。僕も、あの時の演出家としての緊張感はいまでも覚えているんですが、春馬くんが現場に振りまくエネルギーが毎回、こういう(明るい)感じで、それにすごく救われたし、役とピッタリなんですよね。映画の中で弟の裕之に兄貴が引っ張られていきますが、まさにその通りで、柳楽くんもそこに心地よく身を委ねて演じていたし、有村さんも2人の様子を静かに見ながらリアクションしていくという、いいコラボレーションが生まれた現場でした。『いい兄弟だなぁ…』と思いました」と撮影の日々に思いを馳せていた。

 

 

浜野プロデューサー本作に込めた想いを「この作品の舞台になった夏もきっと暑かったと思います。周りでは人がいっぱい死んで、さらに原爆で大変な思いをしている人たちがたくさんいて…ということを主役の3人は一生懸命考えたんじゃないかと思います。それを監督がまとめていってこういう映画ができました。我々としてはそれをちゃんと未来に繋いでいく――いろんなことを考え、懸命に演じてくれた3人がいて、残してくれた作品があって、それを僕らが伝えて、観てくださる方々がいて、それをまた次の人に繋いでいくということになったらいいなと思って作った映画です」と表す。

 

森プロデューサーは最後に「8月15日の終戦記念日ということで、先日、柳楽くんがすごく良い言葉を言っていて、僕もその言葉がずっと胸に突き刺さって、改めて共有させていただきたいと思うのですが、8月6日の広島、9日の長崎…忘れちゃいけないことがあると思います。僕らはここに出てきたキャラクターたちをこうして作品に投影させたので、みなさんずっと覚えていって下さればと思います。そうすれば彼(三浦さん)の思いも報われると思うので…」と声を詰まらせながら呼びかけ、会場は温かい拍手に包まれた。