映画『太陽の子』

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米カリフォルニア上映会 / パネルディスカッションレポート!

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9月17日にアメリカの南カリフォルニア大学にて、

『映画 太陽の子』上映会とオンラインパネルディスカッションを開催!

パネルディスカッションの一部をレポートをいたします。

 

9月17日、南カリフォルニア大学のDornsife Shinso Ito Centerが主催し、オンラインによる上映・パネルディスカッションイベントが実施されました。

ティーチインゲスト:黒崎博監督、森コウ(プロデューサー)、

ケイティ・ピーボディ(協力プロデューサー、南カリフォルニア大学卒)

ホスト:ベリーナ・ハス・ヒューストン(南カリフォルニア大学演劇学部特別教授・作家)

 

Q:本作制作のキッカケは?

黒崎:図書館でたまたまある科学者の日記を見つけたことが始まりです。そこには彼の研究だけでなく、彼の生活や家族への愛が綴られていました。それを元にこの作品を作ろうと決めました。

:NHKのプロデューサー浜野さんより何年も前にこのプロジェクトのお話と脚本をいただき、自分自身が知り得なかった「日本の原爆研究」の事実に驚き、このストーリーを世の中に広めなければならないと思ったのがきっかけです。

ケイティ:科学者として国に尽くさなければいけない気持ちと、家族や周囲への愛の間で生まれる壮大な葛藤を描いた本作には非常に惹きつけられました。

 

Q:観客に何を感じてほしいか?

:ただの戦争映画ではなく、戦時中という非常に厳しい世界で生きる若者たちを描くことが重要なポイントでした。彼らの生活、そして感情を皆さまには感じ取ってほしいです。

黒崎:主人公の修は普通の男であり、マッドサイエンティストではないにもかかわらず、彼の研究がもしかしたら大惨事を生み出していたかもしれない。普通の人間が意図的にではなく、このような状況に置かれ、そこから最悪の結果を招いたかもしれないということを感じてもらえればと。

ベリーナ:修が研究所で他の科学者と格闘するシーンがありますよね。この彼が置かれた時代と環境の中で、普通の男性が彼なりの男らしさを探し求めているとも感じました。

 

 

参加者とのQ&A

 

おにぎりのシーンの長回しについて聞かせてください。

黒崎:おにぎりは修の母が作ったもの。おにぎりは母の気持ちの象徴として描かれています。それを食べながら、修は彼を守ってくれた周囲の人たちについて考えるのです。

ケイティ:戦時中、日本ではお米を調達するのが難しかったと伺いました。

黒崎:もしかしたら、修の母親は大事なお米を息子たちのために取っておいたのかもしれない。

ベリーナ:私の母は第二次世界大戦中、日本で生活していました。母が言っていたのは、都市よりも地方の方が食料が手に入りずらかったと。お米の代わりにお芋などを食べていたと。戦時中のこのような体験はアメリカ人からしたら未知の体験でしょう。

黒崎:脚本にはおにぎりを食べるとしか書かれていなかったのですが、実際に現場に行き、柳楽さんの反応をドキュメンタリーを撮る感覚で撮影をしましたので、あのような撮り方になりました。あれは彼の自然の涙なんです。

 

お気に入りのシーンは?

:海辺でのシーンですね。裕之が海へ向かっていくシーンです。様々な話し合いが行われ、リハーサルも沢山しました。一番撮影するのに苦労をしたシーンですので、思い入れがあります。また、修、世津、裕之の3人が縁側にて話すシーンもお気に入りです。世津は修と裕之とは違う見方をしており、戦後の未来について話します。修と裕之は戦争のことを考えているのですが、彼女の未来の話を聞き、そこから未来について考えるようになる流れが素晴らしいですね。

黒崎:修が荒勝教授に原爆が落ちる瞬間を山から見たいと話をするシーンですね。修は静かに話すのですが、彼の眼には科学者としての狂い、マッドサイエンティストのような狂気が宿っています。このシーンを撮った後、修を演じた柳楽さんが「瞬きをするのを忘れていた」と言ってきたんですね。それだけ役に入っていたのかと感銘を受けました。

ケイティ:研究所のシーンですね。実際に科学の世界を垣間見ている感じがしてとても面白いですし、核についてのリサーチを研究所のシーンのために沢山したので、思い入れがあります。

黒崎:研究所のシーンで言うと、その当時作られた遠心分離機の設計図は見つけたんです。本当に彼らが遠心分離機を作り上げたのかはわかりませんが、現在の核保有国では同じ技術が使われています。

 

 

ボールが落ちてくるシーンはどの様な意図がありましたか?

黒崎:原子核分裂を見せたかったのですが、目に見えるものではないので、代わりにシンプルな物理現象である重力を見せることにしました。

 

日本が原子核爆弾を作っていたという話により、米国が核爆弾を日本に落としたことが正当化されるのではとお考えですか?

黒崎:これは誰が勝った負けたという話ではなく、普遍的な人としてのストーリーを描きたかったのです。何も正当化せず、何が間違っているのかを決めつけず、ただ皆さんに人としてという部分を考えるきっかけになればと思っております。

:どちらが正しいや、どちらの味方をするとかの話ではなく、その時代に生きていた人々を描きたかったのです。

ベリーナ:この作品は若者の葛藤を描いた作品でもありますよね。

黒崎:核爆弾により破壊された広島を写すシーンがありますよね。これも実際の広島の写真をもとにVFXで再現をしました。これをもって何が正しいのかを個人で考えてほしいですね。